エピソード1

保育士をしていた頃の出来事です。1人だけ男性保育士Aくんが入職してきました。 はじめは職員用トイレが男女別になっていなかったり、環境も良くなかったのですが、ずっと保育士になりたかったというA君はめげることなく、明るく働きはじめてくれました。小さいときから子供の世話が好きだったというだけあって、子どもにあまり接したことのない女性の新人さんよりもお世話もずっと手慣れているし、子ども達と遊ぶのも上手でした。とても楽しそうに遊んでくれるし、優しいお兄さん先生として子ども達にもひっぱりだこになりました。背が高いA君が保育園の天井の低いテラスをエプロンをかけて歩いていくと、後ろを鳥のヒナのように子ども達がついて歩いていて、とてもかわいい光景でした。他にも、A君が運動会のダンスで選んだ曲が、年少クラスなのにアップテンポのカッコいい曲で、小さい子には大丈夫かなと思っていたら子どもたちに大受けで、とくに普段集中しにくい男の子達が喜んで練習してくれたり、給食を豪快に盛り付けて食べるのが子どもの食欲をそそったり、多様な年代や性別の先生がいるのは良いことだなあと実感していました。園長も息子のようにA君を頼りにしていて、模様替えや砂場の補修など、なかなか手が回らない力仕事もできて嬉しいと喜んでいました。ところが、一部の先生は、A君が人気があるのが気に入らず、「男性だから何をしても褒められる」と言って良く思っていませんでした。園長がA君に力仕事を頼むときに、普段の業務を他の先生に分担させるのも気に入らないようでした。折しもタイミングが悪く、男性保育士による女児への虐待がしばしばニュースになっている時期でした。A君を気に入らない先生達は、お迎えの時などに保護者にそのニュースの話をしたりして、わざと不安をあおり、保護者会の時に、男性保育士による女児の着替え、オムツ替えは嫌だ、という空気を作り出してしまいました。園長がいくら説明しても、一旦そうなった空気は変えられず、女の子の着替えやオムツ替えができない状態ではクラス担任はできないので、A君は担任が持てなくなってしまいました。A君は、自分が女児を虐待をするかもしれないと思われているということは耐えられない、と言って退職する道を選びました。全くA君に落ち度はないのに、助けるすべもなく、すごく辛くて嫌な出来事でした。